※翻訳などなどを駆使して作成した英文、そして和訳ですが、正解かどうかはちょっと分かりません。
――『朝雪、朝雪……好きです、愛してます……昔からずっと、ずっと……っ!』
所謂”愛の告白”というものを受けて以降、クィンのスキンシップが以前よりも激しくなったように思います。思いを告げられる前と後とのギャップの差に動揺したりもしましたけれども、今は少し慣れてきたような気も致します。
――何処にいったのでしょう、私の知っている冷静沈着なクィンは……?――なんて思ってしまうこともありますけれど、決して嫌な訳ではないのです。
過保護ではないかというほど、私のことを大事に扱ってくださっているのが分かりますし。
えぇと、クィンにぎゅっと抱きしめて貰うのは――好きです、し。
そのー、キス、は恥ずかしいし、なかなか慣れませんが……して頂くの……あのー……そのー……好き、です、はい。
私が差し上げた”厄除け”のお守り――あまり効果はなかったようですが――や、お父さんが誕生日プレゼントにとあげた万年筆を今でも大事に使っていたり、”おじいちゃん”との思い出の品などを大切にしているところも、好きです。
”おじいちゃん”の写真の隣に、私が屋敷から持ってきた唯一の家族写真を置かせてくださって、”おじいちゃん”やお父さんの月命日には態々花を買ってきて、花瓶に飾ってくださる優しさが、好きです。
貴方の穏やかな笑顔が、好きです。
綺麗な青灰色の目が、好きです。
私に触れてくれる大きな手が、好きです。
勿論、貴方が作ってくださる御飯も好きです。大好きです。はい。
――こんなに沢山の”好き”があるのに、私は自分に自信がないのです。
こんなに素敵な人が私のことを好いてくださっていることが嬉しいのに、同時にどうして?と疑問を抱いてしまうのです。
自分に自信を持って、堂々と貴方に「好きです!!!」と言えたら良いのに。
そうしたら、貴方は笑ってくださるでしょうか。
そうだと良いな、と願います。
――そんなことを考えてしまっている私はといいますと、現在、英語の宿題に苦戦しております。ええ、得意ではないので。因みに他の教科の宿題は既に終わっています。
隣にはソファを背もたれにして料理雑誌を読んでいるクィンがいらっしゃいます。普段は眼鏡をかけていらっしゃらないのですけれど、何でも細かい文字が少しぼやけて見える程度に目が悪いらしいので、今はかけていらっしゃいます。眼鏡をかけていない時の方が圧倒的に多いので、眼鏡をかけている彼は普段とは雰囲気が異なって見えて、慣れていないのでそわそわします。
ちらりと、彼が手にしている料理雑誌に視線を動かします。表紙には”今年の冬は『濃厚』、『濃い味』がトレンド!”や”冬の鍋&スープ特集!”と大きな文字で書かれていて、豆乳鍋やらキムチ鍋、野菜たっぷりのトマトスープなどなどの文字も見受けられます。近々、美味しいお鍋などが食べられそうな予感が致します。楽しみです。
じーっと見つめていると、私の視線に気がついたようで、顔を上げると此方を向いて、にっこりと微笑まれます。貴方の綺麗な微笑が、とても好きです、はい。
「どうされました?」
「え?あのー、えーっと……」
特に理由もなく貴方を見つめておりました、なんて正直の申し上げる勇気は私にはなく……!どうやって誤魔化そうかと、ふと、目線を落としますと、途中で止まってしまっている宿題の存在を思い出しました。
「あの、この英文がよく分からなくて……辞書を引きましてもちんぷんかんぷんでして……」
「どのあたりですか?」
彼は読んでいた雑誌を閉じてソファの上に置き、此方に身を寄せてきます。その時にふわっと良い匂いがして、不覚にもどきっとしてしまいました。
「えぇと……」
分からない部分にシャープペンシルで下線を引いて、彼にプリントを手渡します。
「……ああ、これはですね……」
節くれた長い指で文字を指差しながら、説明をしてくださいます。ですが、低くて優しい声を聞いているのが心地良くて、内容が頭に入ってきません――困りました。
「――き、朝雪」
「ふぁい?」
名前を呼ばれた気が致しましたので顔を上げましたらば、至近距離にクィンの端正な顔がありましたので、びっくりして身を強張らせてしまいました。ふ、不意打ちは心臓に悪いです!近いっ!
「……今の説明、全く聞いていませんでしたね?」
貴方は目を細めて、お見通しとばかりに意地悪く微笑みます。うう、悟られてます……っ。
「御免なさい。クィンの声を聞いていたら、その……声が好きだなって、思いまして……」
聞いているのが心地良くて、ほわほわしてくると言いますか……………………………………………………………………………ん?私は今、何を口走って――!?
慌てて取り繕うとしましたが、最善策は思い浮かぶこともなく。ちら、と窺い見てみますと、彼は仄かに頬を赤くして、目を瞠っていました。
「ぬぁ、んでもない、です……っ」
いたたまれなくなり逃げようとして背を見せた瞬間に、ひょいと持ち上げられて、クィンのお膝の上に乗せられました。腰に手を回されているので、逃げられません。
おろおろとしている私を彼は楽しそうに眺めているので居心地が悪くなり、彼の肩に額を当てて、顔を隠します。
「……僕の声、好き?」
「んっ」
耳元で甘く囁かれて、温かい吐息が耳にかかって。私の身体は私の意思とは関係なく、ぴくりと反応して、声を漏らしてしまいました。
「……す、き、です……」
そう答えると、彼は喉の奥で笑ったようでした。
「どうして?」
理由を訊いてくるなんて、意地悪です。流してくださっても良いではないですか。でも、私の口からは言葉が漏れ出てしまいます。
「心地良い低さで、優しく、て、聞いていると……落ち着く、ので……」
「そう……。朝雪にそう言って貰えると、嬉しい……」
後ろで緩く束ねていた髪を解かれて、撫でられたり、指で梳かれたりします。そうされるのが気持ち良くて、私は猫のように彼の首筋に頬を摺り寄せていました。
「朝雪、顔を隠さないで?」
「や……っ」
肩に額を擦りつけるように、ゆるゆると首を横に振ると、宥めるように背中を撫でられて――再び耳元に唇が寄せられます。
「……朝雪が可愛らしいから……キス、したいなぁ?」
「……っ」
どうして貴方は、恥ずかしくなってしまい台詞をさらっと言ってのけてしまうのでしょうか?だけど、どうしてなのか逆らい難くて――ゆっくりと、顔を上げます。顔から火を噴いてしまいそうなほど恥ずかしいので、俯いて、そっと目を閉じて……。
「
頤に手を添えられて、上を向かされて――唇に彼のそれが重なります。啄ばむような軽いキスを幾度かすると、不意に下唇をべろりと舐められました。
「ひゃ……っ」
「ふふ……」
驚いて、反射的に開いてしまった口の中に、彼の舌が侵入してきて。食べられているような錯覚に陥ってしまう、深いキスが始まります。
初めての時とは違って、鼻で息をすることを覚えましたので窒息しそうにはならないのですけれど、それでも息苦しくなってしまいます。
とろけてしまいそうになるほど気持ちが良くて――だけど、苦いです。そういえばこの人、コーヒー(無糖)を飲んでいらっしゃいました。うう、コーヒーの苦味は苦手です。それを楽しめるような大人の味覚ではないので……。
「んぅ……っ!」
ぎゅぅっと彼の服を掴んでいると、彼は何かを察したのか、唇が離れました。
「……ぷはっ」
「どうしたの?」
「……コ、ヒ、にが……い……っ」
息も絶え絶えになってしまっているので、言葉が上手く言えません。でも私が何を言わんとしたのか、彼は直ぐに気付いてくださったようです。
「……ああ、御免ね?」
机の上においてあるマグカップを手にして、残っていた”朝雪スペシャル”を一口飲むと、彼は苦笑いをします――甘いものが不得手なので。
「これで良い?」
「ふぇ?」
口の中を甘くしたから良い?、ということでしょうか?尋ねようとして薄く開いた唇に、再び彼の唇が重なります。
――第二ラウンドが始まってしまいました。
ふにゃぁ~。
漸く解放された頃には私はぐったりとしてしまい、彼の胸に身体を預けて、荒くなってしまった息を整えます。一方、彼は頗るご機嫌で、息が乱れていないように見えます。
どういうことですか……!?
「しゅ、くだ、おわっれにゃ……っ」
「大丈夫ですよ、手伝いますから」
――あら?敬語に戻ってませんか?先程までは、その、少々意地悪な感じのくだけた話し方でしたのに。
満足気に微笑んでいる彼は、互いの唾液で濡れてしまった唇を赤い舌で舐めます。その仕草が妙に艶かしくて、心臓がどきどきとしました。
動けないでいると、彼はべたべたになってしまった私の唇や、飲み込めきれなくて口の端から零れ落ちた唾液を舐めとってくださいました。は、恥ずかしい……っ!
「
「ふぁ……っ」
耳元で囁かれて、するっと脇腹を撫でられると背筋がぞくぞくして、声が漏れ出てしまいました。
「
「んっ」
頬にキスを落とされ、ぎゅうっと抱きしめられました。
――温かいなぁ。
貴方の腕の中は、安心します――が、時々言いようのない悪寒を感じることもあります。それは一体、何なのでしょうか?
そして。
宿題は確かに手伝って頂けました。
――が、「御褒美をください」と満面の笑みで言われてしまいまして――第三ラウンドが開始したのでした。
剣道部に所属しておりますので、体力には多少自信がありましたが……流石にぐったりです。
何やら運動をしていらっしゃるようには到底見えないのですけれど、貴方の体力は底なしのようです。
何故ですか!?